またぐるなびで記事を書きました!有名なスコッチウイスキー、バランタインのキーモルトをめぐる冒険についての物語です。未読の方がいらっしゃいましたら是非お読みください!とにかくすごく楽しい家飲み会でしたので、その雰囲気が少しでも伝われば幸いです。
今回の企画、俺にはどうしても心残りが一つだけあったんですね。それは、スーパーハイボールをつくろうとして、やり忘れたことなんです。
スーパーハイボールとは何か。それは古谷三敏の『BARレモン・ハート』にて登場した、究極にスノッブな飲み方です。まずブレンデッドウィスキーのハイボールをつくる。そして、そのブレンデッドウィスキーの構成原酒のキーモルトになるウィスキーを薄い膜になるように注ぐ。以上です。
実際に作ってみましょう。今回はバランタイン12年のハイボールにミルトンダフを合わせてみます。
バランタインハイボールだけでも当然美味しいですが、ミルトンダフを加えると複雑な味になるというか、味わいの変化をダイレクトに感じれるので面白いです。
今回比較的特徴のないミルトンダフでやってみましたけど、これがスキャパのような甘いウィスキーやアードベッグのような極端にスモーキーなウィスキーでやるならまた全然違う印象になるでしょう。ぐるなびの企画でさんざん魔法の七柱を遊び倒したと思っていましたが、まだまだ楽しみ方はたくさんあるんですね。ウィスキーは奥深い。
これ、別にブレンデッドウィスキーのキーモルト(構成原酒)を使う必然性、まるでないと思うんですよ。でも、キーモルトを使うことがある種の物語性を帯びる、それは必然である、ということなんだと思います。
我々はふだん意識はせずとも多くの物語を消費しています。これについては以前書いた文章を引用します。
例えばですね、同じワインを飲んでたとしても、「コンビニで買った480円のワインだよ」と聞かされて飲んだワインと、「今日という日を祝おうと思って買っておいた、あなたが生まれた年のワインだよ」と聞かされて飲んだワイン、どっちがより美味しく感じると思いますか。
美味しんぼの京極さんが生まれ故郷の四万十川の鮎を食べて「なんちゅうもんを食わせてくれたんや…」と感動し落涙するのと同じで、そこには京極さんの琴線に触れる文脈というものがあります。
そう、たとえ同じウィスキーを用いた場合でも、それがメインのブレンデッドウィスキーのキーモルトである、という物語を用意したか否かで飲み手の感じ方は大きく異なると思うんですよね。これ、インスタ映えと原理的に同じ概念だと思います。写真ではないけれど、文脈がめっちゃ映えてる。しいて言うのなら”文脈映え”してる。
この考え方は、村上隆さんの影響をかなり受けてます。現代美術は海外でなぜあんなに高額で取引されるのか、それは文脈ゲームにのっとっているからだ、と喝破したのが村上さんです。その現代美術という名のゲームのルールを理解した村上さんは、たちまちそのゲームでの勝者になった、というわけです。面白い本ですので機会ありましたらご一読ください。
インスタ映えはかなり一般化した概念になりましたが、究極的にはそもそも写真である必然性もないのです。行為が複雑な文脈の上に成り立ったものであるならば、それは面白いし、映える。
ウィスキーはけっこう物語がいろいろ用意されてるので、魔法の七柱に限らずともこういう文脈ゲームは楽しめると思います。ウィスキーは奥深い。皆さまもぜひウィスキーの物語に寄り添う文脈ゲーム、つまりウィスキーをめぐる冒険をお楽しみください。