山椒香る幻の原始キムチ先行試作型、大地に立つ!

ある日、ふとwikipediaで「キムチ」の項目を眺めていたら、こんな記述が目に留まった。

 

キムチは、もともとは朝鮮半島の厳寒期に備えた保存食であり、野菜を塩漬けしたものからはじまった。これに香辛料としてのニンニクサンショウなどを加えるようになったのが、キムチの原型である。16世紀に日本から朝鮮半島に唐辛子が伝えられると、栽培や加工が容易な唐辛子がサンショウに代わって用いられるようになった。  

https://ja.wikipedia.org/wiki/キムチ

 

へー。16世紀以前のキムチは唐辛子でなくサンショウを使ってたんだ。知らなかった。で、唐辛子の方が栽培や加工がしやすいからつくりやすいのだ、と。なるほど。ってことは、唐辛子でつくるキムチは「量産型」であり、サンショウを使ったキムチは量産のきかない「試作型」ということになる。つまり、ガンダムで例えると、唐辛子キムチ=ジムであり、山椒キムチ=ガンダムであるに他ならない。

 

ならば見せてもらおうか、原初の姿をたたえた先行試作型である山椒キムチの味とやらを!(以下、原始キムチと呼称する)

 

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とはいえレシピなんてないので想像でつくるしかない。そろえた材料は白菜、実山椒、ニンニク、花椒である。

 

あと味の決め手として量産型キムチレシピでよく見かけるのが塩辛などの魚介、および昆布や煮干などのダシ類だ。これに関してはキムチのレシピによりバラバラで共通のレシピはなく、具材のチョイス・分量の違いによりその家その家での個性が宿るのだと思う。ここはセンスが問われるところである。

 

俺が今つくってるのは原始キムチなので、原始キムチの再現レシピなので、原始キムチにふさわしい具材を吟味する必要がある。思うに、昆布や煮干などのダシでumamiが出るというのは後世の入れ知恵感が鼻につき原始キムチにふさわしいとは言えない。

 

イカの塩辛はどうか。悪くはない。悪くはないが、この塩辛という技法にどうしても文明を感じてしまいひっかかるのである。シヴィライゼーションで例えて言うならば、「ルネッサンス」に突入した文明には塩辛があっても不思議ではないが、「中世」程度の文明レベルであれば、塩辛の概念がある文明とない文明に分かれてるのではないだろうか。

 

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イカの塩辛はやめよう。危ない橋を渡ることは無い。俺がチョイスしたのはスルメである。つまりイカの干物。干物であれば、「中世」どころか「古典」時代であっても全文明にあるテクノロジーであると自信を持って断言できる。まさに原始キムチにふさわしい。

 

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これらの具材に加え、総重量の3%の塩を振り、ザク切り(ガンダムだけに)した白菜と実山椒、花椒とニンニクをよく混ぜる。

 

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量産型キムチのレシピだとたいてい白菜を塊のまま塩に漬けてから水抜きをすることになっている。しかし塩が貴重品だった時代に水抜きをしていたとは到底おもえない。ゆえに原始キムチレシピでは水抜き工程を強い意志をもって省略する。

 

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熱湯消毒した密封ビンにぎゅうぎゅうに詰める。数日たてば水が出てかさが減るので思いっきりぎゅうぎゅうに詰めて良い。

 

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涼しい場所に1週間ほどおいておく。

 

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1週間後。ちょうど良い量になった。

 

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ビンを開封すると「ゴボォ」という豪快な音がした。発酵が進んでいる証拠である。

 

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さて、いよいよ実食である。山椒香る幻の原始キムチ先行試作型、はたして美味いのかどうか…

 

 

一口目、そうとうスパイシーな味がした。あとから乳酸発酵による酸味を感じる。これは…正直よく分からない。未知の発酵食品、という感じである。そもそも初見の発酵食品って一口目から手放しで「美味しい!」ってならないような気がする。ベジマイトやブルーチーズもある程度食べ慣れないとその味がよく分からないし、それは我々が慣れ親しんだ納豆や味噌だって海外文化圏の方にしてみれば同様なのだろう。

 

つまり、現時点で俺にはこのスパイシーな原始キムチが美味いのか美味くないのか、慣れてないので正直よく分からないのである。これはまるでガンダム1話目の、操縦方法が分からずガンダムに振り回されるアムロ・レイみたいではないか。思えばZガンダムカミーユだって、エヴァのシンジ君だって、初回は機体のオーバースペックっぷりに振り回されている。これはまさに第一話あるあると言えるのではあるまいか。

 

「落ち着くのよ、シンジ君!」

 

えっ、ミサトさん

 

「大丈夫、あなたならきっと原始キムチ先行試作型を使いこなせるわ!」

 

展開が急すぎるよ、ミサトさん

 

「さっそく現れたようね。使徒よ」

 

使徒

 

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…これが、使徒

 

「作戦を説明するわ。原始キムチを単独で食べても味が分からないのなら、焼肉の付け合わせとして食べるのよ。焼肉にはキムチ。量産型キムチと焼肉の相性が抜群なら、原始キムチと焼肉だって相性は合うはずよ」

 

なにを言ってるのかさっぱり分からないよ、ミサトさん

 

「四の五の言わず食え。原始キムチ、リフトオフ!!」

 

うわああああ!?……!?こっ、これは……合う!!!!山椒の香りがスパイスになって、焼肉の臭みを消してとっても美味しいよ、ミサトさん!!

 

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「そうだろうと思ってビールも用意したわ」

 

最高。

 

というわけで唐辛子のキムチも美味いけど山椒キムチも美味いのでぜひ一度お試しください。以上です。