南部鉄器、たこ焼き、東京キャンプ

とうとう念願のたこ焼き器を買った。南部鉄器でつくられた池永鉄工の電調せんか16穴。鉄板のみのいたってシンプルなものだ。

 

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鉄板のたこ焼き器の良いところは、幅広い使い方ができることだ。ガスコンロはもちろん、カセットコンロ、電気調理器、やろうと思えば焚き火でだってたこ焼きが作れる。俺は娘と二人で焚き火でたこ焼きをつくるための旅に出ることにした。

 

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薄力粉とだし汁、卵はあらかじめかき混ぜておき、ペットボトルに詰めておく。タコやネギもあらかじめ切っておく。現地で使う道具を最小限にするために、家で出来ることは家でやる。

 

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二人分の食材と食器、火おこしにつかう最小限度の道具、そして娘のおむつや着替え。大人一人が手荷物で持てるよう荷物は極限まで抑える。

 

 

詰めるとこうなる。クルマで行くキャンプは荷物の心配など不要だが、公共交通機関で行くソロキャンプは道具の選択の段階で頭を悩ませる必要がある。極力荷物を減らす。なぜクルマを使わずにこのような苦労をするのか。決まっている。焚火をしながら飲む酒は最高に美味しいからだ。

 

 

目指す城南島キャンプ場は東京モノレール流通センター駅からバスで15分くらいのところにある。京急平和島駅やJR大森駅からもバスが出ている。でもせっかくなので普段乗る機会のないモノレールに乗ることにした。生れて初めて娘と一緒に乗るモノレール。家族で横浜の実家にクルマで帰るときは首都高1号線からよくモノレールを眺めていたが、今日はモノレールから首都高を行きかうクルマを眺めている。娘を先頭車両の窓際に座らせたら興奮して車窓を眺めているようだった。

 

流通センター駅で降りると、ちょうど目の前でバスが城南島に向けて出発したところだった。時刻表をみたら次のバスは1時間後。スマホで調べたら駅から城南島キャンプ場までは徒歩で45分と表示されている。タクシーも全く通らない。やれやれ。歩くしかない。

 

 

城南島へ向けて歩く。交通量はとても多い道だが、そのほとんどは大井ふ頭をめざすトラックである。歩いて城南島キャンプ場を目指す物好きな歩行者など存在しない。俺と娘だけだ。

 

 

 

手入れのされない街路樹や植栽が野生に帰ったようにのびのびと成長しており歩道を侵食している。そもそも歩行者などいないのだから手入れなどする必要などないのだ。周りは物流倉庫や工場で人の気配はない。いや、人はいるのだろうが、みな建物やクルマの中でひっそりと仕事をしており外に出てこない。

 

 

人はいるけど人はいない。建物はあるけど何もない。娘と二人で歩いていると孤独すぎてなんだか砂漠をあるいているような気分になってくる。いや、これこそが本当の意味での東京のアウトドアであり東京のキャンプなのかもしれない。

 

 

45分かけてたどり着いた城南島キャンプ場は砂漠のオアシスのようであった。受付で簡単な手続きをすませ指定の席で荷物を降ろしビールをあおるとようやく人心地ついた。さて、これから火おこしだ。

 

 

実はここに来るまでの道中にたくさんの木の枝が落ちており、軽く拾っただけでこのぐらいの量になった。火つけしやすい枯れた松の葉や松ぼっくりもキャンプ場にたくさん落ちている。薪を持参したのでたいした量を拾ってないが、本気で拾えば燃料すら全て現地調達できるかもしれない。

 

 

火おこししてる間、落ちてるどんぐりをかき集めて遊ぶ娘。

 

 

ビールを飲みながら火おこししてたらあっという間に火がついた。

 

 

 たこ焼き器を火にかけ、油を引き、タネを落とし、具を入れた。

 

 

うちわで風を送る娘。

 

 

ひっくり返す。ここで気づいたのだが、完全に火力不足だった。薪が足りない。キャンプでたこ焼きを作るには、安定して強い火力を供給しつづける必要があった。ここまでですでに持参した薪を半分以上使用している。火力が弱いのでたこが上手くひっくり返せずぐちゃぐちゃになってしまう。家でたこ焼きを作った経験がほとんどないので単純に己の技量不足なのかもしれないが…。

 

 

 まあそれでもなんとか形にはなった。たこ焼き第一弾の完成だ。

 

 

あっという間に完食してしまった。うまい。最高。海風に吹かれながらビールを飲み、焚火をし、つまみに食べるたこ焼きの美味しさといったら筆舌に尽くしがたい。

 

 

 さて、ここからが真の勝負である。まだまだたこ焼きのタネも具もたくさんあるのだ。燃やせるものは何でも燃やす。娘には悪いがとりあえずかき集めたどんぐりを燃すことにした。もちろんこんなのじゃ全然たりない。枝。枝が必要だ。

 

 

娘と一緒にキャンプ場内で燃料をかき集めることにした。場内では簡単に松葉が手に入りよく燃えるのだが、一瞬ですぐに火が消えてしまう。俺と娘は蒸気機関車の給炭手のように、ひっきりなしに燃料をかき集め、燃やし、また燃料をかき集めた。「おとうちゃーん、松ぼっくりあったよォー」娘もノリノリでこの状況を楽しんでいるようだった。

 

 

 我々はそのようにして、持参した1.5L分のタネを全て使い切ってたこ焼きをつくった。次に行く時は薪をもっとたくさん持って行こう。でも、こうやってアドリブで楽しむキャンプもじつに楽しいものだった。

 

 

撤収し、受付横の多目的トイレで娘のトイレをすませ、帰りのバスを待つ。娘は疲れたのか待ってる間にすぐ寝てしまった。

 

 

お疲れ様。