ねえ!シン・ゴジラ観た後に町田康の「ギャオスの話」を読むとめっちゃ面白いからみんな読んで!

タイトルが俺の言いたいことの全てです。まあ聞いてください。

 

浄土 (講談社文庫)

 

町田康の浄土という短編集を何気なく読んでたのですが、その中の短編の一つ「ギャオスの話」を読んでたら、なんだかシン・ゴジラとシンクロしまくっていて、まるでシンゴジラパロディのようでとても面白く読め興奮しました!

 

物語は、JR中央線中野駅北口に面する公園に突如として全長65mの怪獣・ギャオスが登場するところから始まります。

ギャオスの第一発見者、胤 田平夫は、驚きのあまり脱糞します。

 

数時間後、病院に搬送され恢復した胤 田はギャオスの最初の発見者として共同インタビューを受けたが脱糞を恥じて満足に喋ることができなかった。

しかし現場の惨状はそれどころではなかった。胤 田が昏倒した直後、ギャオスもまた脱糞、その糞量は胤 田の比ではなかった。

またギャオスの便臭たるや激烈で通行人は目や頭の痛み、吐き気、目眩ちうった症状に見舞われた。痛みは激烈であった。

よく肉食獣の糞は臭いというがまったくその通りでギャオスの糞が臭いのはギャオスが肉食獣だからであった。

 

そういえば怪獣もので脱糞シーンを今まで見た記憶がないが、彼らも生き物なのだから食べ物を食べたら糞ぐらいするだろう、そういう意味ではリアルな描写といえます。まるでそびえ立つクソだ、っていうのはフルメタルジャケットハートマン軍曹の名セリフですが、比喩でもなんでもなくマジでそびえ立つクソですからこれ。

 

ギャオスの食料は人間です。最初は中野駅周辺で食事をしていたのですが、中野駅周辺から人の気配がなくなると食物を求めギャオスは新宿に移動します。

 

甲州街道は糞によって途絶、建物は軒並み超音波で切断、或いは素手でどつきまわされて倒壊した。 

 

政府とて拱手傍観していたわけではない。

対応はむしろ迅速であった。

内閣総理大臣・錦奔一は第一報を受くるやただちに関係各方面に指示して自衛隊の出動を命じた。 

 

この錦奔一がもうねえ、脳内で大杉漣で再生されるっていうか、この後の奔一の行動は大杉漣がやってると思うととても面白いのですが、あまり引用しすぎるとギャオスの話を読む面白さを削いでしまいますので自分で読んでください。

 

そして総理は自衛隊に銘じて京王プラザホテル前に座り込んだギャオスに35㎜対空連射砲を打ち込むがまるで効かない、怒ったギャオスの超音波攻撃で機甲部隊は壊滅する、というお約束の描写もありますが、この部隊の指揮官・八田八郎もやはりタバ作戦の司令官・ピエール瀧で脳内再生されます。これもまた…w や、いいです。ご自分で買ってお読みください。

 

ちなみに35mm対空砲とはこれであります。

 

87式自走高射機関砲 - Wikipedia


火力足りなくない?タバ作戦では10式戦車が総攻撃をかけました。10式はギャオスの話の当時は存在しないのでせめて74式をださんかい、と思ったのですが、京王プラザホテル前にいるのなら位置的に新宿中央公園から砲撃するしかなく、戦車だと俯角が足りず足元しか撃てないとなると高射砲撃に合理性ある!町田康はミリオタなのかもしれません。

 

ひとしきり暴れたギャオスは西参道口の方へ歩いて行き首都高速4号線を足で滅茶苦茶に蹴り壊して南へ向かった。

関係者は、「このまま真っ直ぐ南下して代々木公園に行ってくんねえかなあ」と思った。

一般の都民はテレビを見ながら、「くんな。こっちにくんな」と思っていた。地方の人は、「おもろ」と思ったり、そうは思わなくてもむやみに興奮して隣の人の肩をばんばん叩いたりしていた。

 

錦奔一もまたテレビ画面にみいっていた。

しかし奔一は一国の指導者である。ただ、くんな、と念じているだけではすまない。

奔一は迷っていた。彼はある決断を迫られていた。実は奔一はアメリカ合衆国大統領オルグ・スターから、「なんやったら僕らの軍隊が出動したってもええよ」と云われていたのである。

奔一は専門家チームからいかな米軍といえどもギャオスを倒すことはできないだろうという報告を受けていた。専門家はどんな強力な軍隊もあのいやらしい超音波によって撃滅されるであろうと云ったのである。 

 

合衆国大統領が登場し決断を迫られるのもシンゴジラですが、専門家チームもまさにシンゴジラ的展開といえます。市川実日子高橋一生たちが真剣にギャオスのそびえ立つクソを分析してるところ想像するとなかなか味わい深いものがあります。 そりゃあね。そびえたつクソという貴重なサンプルあるので採取して分析しますよね。実日子さんが。実日子さんがクソのデータを徹夜で分析してッターン!って。いけるかもしれません。って。言いますよね。想像するとめちゃめちゃ面白くないですか。

 

暴れ放題に暴れたギャオスは夜になると中野駅北口に面した公園に戻って眠った。戻ってくるギャオスを見て中野区の住民は、「マジかよー」と叫んだ。マジであった。

ギャオスは眠る前に脱糞した。

場所は朝と同じく中央線の線路上である。ギャオスはここを糞し箱と定めているらしかった。迷惑この上ない話で周辺住民は頭痛・眩暈・嘔吐感といった症状を訴えた。糞臭は風向きによっては方南通りを越え下北沢あたりまで漂うこともあった。中野の糞が下北沢で臭い。いみじきひがごとである。

 

俺はここでシンゴジラのレーザービームを思い出しましたが、そもそもビームなんて出さなくったって普通に怪獣が生活しているだけで、そびえたつクソの威力で広範囲に被害を及ぼすんです。まるでそびえたつクソのレーザービームだ!!

 

この後もいろいろな登場人物が現れるので、ぜひ皆様におかれましてはシンゴジラキャストの顔を思い浮かべながらギャオスの話を読んで欲しいのですが、この物語のラストもまるでシンゴジラと同じなんです。結局日本の力ではギャオスを倒すことはできず、中野駅前に居座るギャオスとともに共生する道を歩むという…!やべー。この話の初出は2004年1月号の文学界です。や、もちろんね、ギャオスの話自体は過去の怪獣映画のパロディなので似てる話になるのは当然なのかもしれませんが、でもこのラストってある?もちろん俺が不勉強なだけでシンゴジラ以前にもこういうラストの怪獣映画があったのかもしれないけど…いやでもシンゴジラを見た後で10年以上前の小説を読んだ時にシンクロしまくるのはとても面白い読書体験でした。皆も読んでみて!

 

シン・ゴジラ