2歳4カ月の娘と、生れて初めて一緒に飛行機に乗り、札幌を旅行してきた。その旅行がとても素晴らしく楽しかったので、その思い出が色あせてしまわぬうちにここに記す。
これは俺にとってはただの旅行ではない。いままで自由にどこへでも行けたのが、娘が生れてからは原則的に「娘が行けないところには家族で行けない」のハンデを背負って生きることになったのだ。そのハンデを、娘の成長と親の忍耐で徐々に解除していくという作業を、ここ1年ずっと行ってきた。娘と初めて一緒に乗ったバス、娘と初めて一緒に乗る電車、娘と初めて行くファミレス…。しんどいことも多々あったが、全てが初めての体験であり楽しいものだった。娘の初体験は、俺にとっての初体験でもある。いつものバス、いつもの電車、いつものファミレスですら困難な障害であるとともに、それを娘とともにのりこえる体験はとても新鮮なものになるのだ。繰り返すが、これは僕にとってはただの旅行ではない。娘と初めて一緒に飛行機に乗って行く2泊3日の旅行である。現時点での娘の成長の集大成となるものだ。結論から言えば、多少のグズりはあったものの、娘は極めて落ち着きをたもち、この旅程を踏破してみせた。娘の成長を実感するともに、久しぶりに遠出し旅先で美味しいもの三昧の日々を送れてとても楽しかった。だから、この感動を記録しておきたい。傍からみればたいしたことはない旅行であるが、我々にとっては偉大な一歩なのだ。
我々はよく食べ、よく飲んだ。六花亭本店でお菓子、サッポロビール園でラム肉とビール、チェックインまでの待ち時間に喫茶店でビール、海鮮料理屋で魚とビール、狸小路とすすきのではしご酒、朝食ビュッフェで山盛りのいくら丼、電車に揺られながら小樽の鮨詰、余市蒸留所でウィスキー、狸小路で回転寿司とビール、朝食ビュッフェで山盛りの海鮮丼、千歳でカルビーの揚げたてポテチとカニいなり。こうやって書くとほんとに飲み食いしかしてない旅行だったなと思う。しかし娘が生まれるまで我々夫婦は週末の居酒屋で一緒に過ごす時間がささやかな幸せであった。もちろん娘が生まれてからはそんなことできなくなってしまったわけだけど、今回の旅行でかつての自分を少しだけ取り戻せた気がした。
前回の写真をあげてから3か月たったが、たった3か月の間に娘はずいぶんとたくさんの初体験をこなした。初めてのファミレス、初めての盆踊り、初めての野球観戦、初めてのラジオ体操、初めての表彰状、初めてのプール、初めての外泊…数えだしたらきりがない。不思議な感覚だ。もう俺の中では2週目の人生をやっている気がする。昔のファミコンゲームは、魔界村でもスパルタンXでもそうなのだが、一度ゲームをクリアした後の2週目は敵が強くなり難易度が格段に上がってるのだ。いまの娘と一緒に過ごす人生はまさにそんな感じである。昔は普通にできたことが、いまは大変難儀だし、あるいは出来なかったりする。しかし一度は自分が通った道だ。そして、娘は成長する。娘の成長とともにハンデをひとつづつ解除していく作業が、いまの俺にとってこの上ない喜びになっている。