純粋な趣味としてのゴミ拾いについて

ゴミ拾いが好きである。たまに休みの日を利用して野外に出かけ、落ちているゴミを拾って帰るのを好きでやっている。

 

これを言うと大抵「ボランティア活動ですか、立派ですね」みたいな反応が返ってくる。完全に誤解である。例えば趣味がプラモですという人に対して「ボランティア活動ですか、立派ですね」なんて返すだろうか?

 

俺はただ単に好きでゴミ拾いをやっているので誰かのためにやってるわけじゃないんだ、自分のためにやっているんだ、立派な行為でもなんでもないし、ましてやその立派なことをしている自分を誰かに認めてほしくて言ってる訳でもない。

 

こういうのをいちいち説明するのが面倒くさいのでこの趣味のことを他人に言うことが億劫になってしまった。だから普段は言わない。

 

しかしここは俺のブログなので、俺の趣味について存分に語っていいはずだ。なので書く。純粋な趣味としてのゴミ拾いについて(以下、純粋ゴミ拾いと呼称する)。

 

例えばビーチコーミングという趣味がある。浜辺を散策し、打ち上げられた珍しい漂着物などを観賞したり収集したりする。なるほど立派な趣味である。ならば、純粋に拾う行為のみが好き、つまり純粋ゴミ拾いが好き、というもの好きがいたってもいいのではないだろうか。というか事実、少なくともここに一人いる。麻雀といえばなにかを賭けるものと思ってる人は大抵「ノーレートの麻雀なんて面白いの?」って言うけど、いや、ノーレートの麻雀すげえ楽しいですよ、天鳳の会員が何人いると思ってんの、と言いたい。つまり己の実益とは無関係に趣味というものは存在する。

 

俺はもともと風景写真を撮るのが好きで、休みの日にでかいカメラをかついで海とか河原によく行っていた。するとどうしてもその辺に落ちているゴミが気になってしまう。土に還るゴミならいいけれど、土に還らない石油化工品がその辺に落ちているとどうも落ち着かないのである。これは「そういう性格なんだ」とご理解いただきたい。きれい好きな人が自分の部屋が散らかっていると落ち着かない、というのと一緒である。野外に落ちているゴミをみるとどうも落ち着かないので、出来る範囲でゴミ拾いをする。これは自分が気持ちよくなるためにやっているので完全に自己満足行為である。お分かりいただけるだろうか。

 

俺は自分の部屋が散らかっていても特になんとも思わない。なぜならゴミが散らかっているわけではなく、必要な物が散らかっているだけであるからだ。なので純粋ゴミ拾いは家庭内の片づけとはなんら相関関係がないことも同時に言っておきたい。ちなみに家庭内におけるゴミの分別とゴミ出しは大好きである。しかしゴミでないものを所定の位置に戻す作業は本当に苦手なのだ…。部屋の片づけはゴミ拾いとは全く異なるゲームなのである。

 

 

 

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去年の夏、 娘と一緒に海にゴミ拾いに行った。

 

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ててててーっ

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ごみあったよォー!

 

娘もすっかりゴミ拾いが好きになってしまった。ゴミ拾い、宝探しみたいで楽しい。海がきれいになるので楽しい。子どもと遊ぶ野外のアクティビティとして最適なのではと思っている。この楽しさ、伝わってるだろうか。

 

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月に1回、町会の清掃ボランティアに娘と参加している。集合時間が早いのだけどこの日は娘も毎回ちゃんと早起きする。娘も本当に楽しみにしてるのだ。

 

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参加した子どもにはお菓子が配られる。大人には発泡酒一本配られる。別にそれが目当てじゃないけれど、早起きは三文の得、という体験も生活習慣として良いのではないのだろうか。

 

 


一昨年の秋以来ずっと使ってなかったBioLiteキャンプストーブ、さすがにそろそろ使わなければまずいと思い、久しぶりに娘と二人で野外BBQをしようという気になった。

 

前回は京急に乗って三浦半島に行ったのだけど、今回は近場でやることにした。江戸川の河原である。

 

www.ktr.mlit.go.jp

 

江戸川河川敷は公園や緑地を除き火器の使用は自由である。とはいえ、火器使用者のマナーが悪ければ将来規制されるであろうことは想像に難くない。だからこういう場合、江戸川河川敷でBBQを楽しむと同時に、ついでに自分たちが出した以外のゴミも拾って帰るといいと思う。気分は野口健さんのエベレスト清掃登山である。素人がゴミを捨てて去っていくのだから、アウトドア上級者たる俺と娘がそれらを拾って帰るしかない、というマウンティング感覚だとボランティア精神が台無しになるのでちょうど良いと思っている。

 

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リュックサックひとつあればBBQは可能である。BBQで酒を飲みたいのなら公共交通機関で行くしかない。

 

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娘のリュックにはおやつと着替え。目線をくれているヤギさんはぶち猫さんにいただいた動物ぽんぽんである。

 

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着いた。家からドアツードアで40分くらい。

 

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俺は火おこし。

 

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娘は薪拾い。

 

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酒を飲みながらぶりの味噌漬けを焼いている。西京焼きである。

 

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美味しくできた。野外の食事と酒は最高なのだ。

 

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BBQ撤収の後はゴミ拾いである。

 

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河川敷の階段にぺろぺろチョコレートの棒が二つ。分かるよ。分かる。青春だ。

 

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この日はコンビニ袋ひとつぶんのゴミを回収して撤収。お疲れ様でした。よく頑張った。

 

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河川敷から駅までの道の途中には銭湯がある。これでひとっ風呂あびたら最高なんだけど…娘は熱い湯が苦手なのでちょっとまだ早いという感じである。数年後には河原BBQ即銭湯をキメてみたい。

降雪東京2018/1/22

東京4年ぶりの大雪、ということで仕事を終えて帰宅し夕飯を食べた後、一眼を持って写真を撮りに出かけた。

 

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おかず横丁

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昭和通り

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秋葉原、中央通り。

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まだ20時過ぎだったのに本当に人がいなかった

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御徒町

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アメ横

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上野公園。

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この階段、踏み外したら死ぬと思った。

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不忍池

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カメラは6D mark2、レンズは24-70F4L、ストロボは430EX2。

 

2時間くらい散歩してたけど、1時間過ぎたあたりでAFが効かなくなった。MFならシャッター切れる。その後、液晶画面も死んだ。再生をおしてもMENUを押しても動かない。しかし撮影すると残り撮影可能枚数が減っていくので、一応は撮れてるんだな、と思いつつ撮影した。喫茶店で休憩。レンズを外して電源を入れると液晶が起動するけど、レンズをつけるとなぜか液晶がつかない。再生を押してもMENUを押しても無反応。レンズを外して電源を入れなおすと再生もMENUも使える。なんでだろ。乾けば復活するかな…と思いつつ帰宅。なお、他のレンズに付け替えても同様の症状なので本体の問題っぽい。6D2の防滴性能はたいしたことないので過信は禁物ですね。取り急ぎ、備忘録として。

 

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(追記)

乾かして一晩おいたら全機能が復旧しました。このぐらいじゃ死なない、のでこれからもガンガン使っていきます。

ファッションプロレタリアートのための生ストロングゼロのつくりかた

ストロングゼロ、飲んだことないので飲んでみたい」などと興味本位で飲んだ人に限って「人工甘味料の味がきつくてマズい笑」などと抜かすので、「ボウズにはまだ早かったかな…。どれ、おじさんがボウズのような”お坊ちゃん”でも飲めるようなやつをつくってやるよ、ガハハ」と言いたくて仕方ありません。今から紹介するのは”お坊ちゃん”でも飲めるようなストロングゼロ、すなわち”生ストロングゼロ”の作り方です。

 

ストロングゼロとは何か?俺が考案したカクテルです。飲み方自体は古典的でよくあるタイプの飲み方です。しかし、カクテルの世界は奥が深く、カクテルレシピにほんの一滴でも隠し味を加えたり、あるいはベース酒の銘柄を指定するだけでオリジナルカクテルになり得ます。つまり、今から紹介するレシピは俺オリジナルの飲み方で、だからそのカクテルの命名権は俺にあります。これから記すのは本邦初公開の生ストロングゼロのつくりかたです。

 

まずウォッカを用意します。しかしウォッカならなんでも良いわけではありません。銘柄はすでに決まってます。ギルビーウォッカです。なぜギルビーウォッカなのでしょうか。理由は簡単です。生ストロングゼロをつくるウォッカは安酒でなければなりません。安酒とはなにか?俺の答えはこうです。安酒とは、肉のハナマサで扱っている酒のことである*1肉のハナマサで売られてるウォッカはほとんどの場合スミノフかギルビーですが、ギルビーの方が安いので生ストロングゼロに最もふさわしいウォッカはギルビー以外にありえません。

 

次にレモンとソーダ水を用意します。ソーダ水はハナマサのプロ仕様ソーダ水…と言いたいところですが、これだとハナマサのない地域では入手が困難で、よもや通販で取り寄せともなれば送料もかかり立派なブルジョアになってしまいます。ソーダ水もレモンもその辺で売ってるものを使いましょう。

 

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次にレモン半個を絞ります。教科書的に言えば、あまり強く絞りすぎると苦みがでてくるので程々でよい、となりますが、ここは全ての握力を使ってレモンから全ての水分を奪うつもりで徹底的に絞りつくします。なぜなら本家ストロングゼロ-196℃製法では液体窒素で瞬間冷凍したレモンを破砕した粉を使用する、つまりレモンの皮から何から全ての成分が入っているからです。さすがに輸入物のレモンの皮はつかいたくありませんが、本家ストロングゼロの精神にのっとってレモンの全てのエキスを搾り取ります。

 

ソーダ水は250mlを使用します。以前カフェジントニックの時にも言及しましたが、ソーダ水は一晩で使い切ることが肝心です。ソーダ水を封を切ったまま中途半端に残すと翌日以降炭酸が抜け美味しく飲めないからです。ゆえに500mlの半分の250mlを使用し、一晩で二杯飲むのが正しい飲み方です。ストロングゼロ350ml缶2本に相当するのでちょうどいい酒量と言えます。

 

 

www.mizuhebi.com

 

ちなみにレモン半個を絞ると約50mlになります。使用するソーダ水は250mlです。ここで度数37.5%のギルビーウォッカを使用して本家ストロングゼロのアルコール度数9%にするにはウォッカを何ml入れればいいでしょうか?

 

A×37.5%=(A+50ml+250ml)×9%

 

 すなわちAは95mlと導きだせます。

 

はい、これですべての材料をグラスに入れステアして完成…と言いたいところですが、この段階で飲んでみると本家ストロングゼロとなにかが違うことにお気づきになるかと思います。

 

甘味です。

 

やっぱりあの人工甘味料は伊達じゃなかった。このままでも飲めるけど、生ストロングゼロというには一味足りない、ということで砂糖を小さじ一さじ加えて生ストロングゼロは完成です。

 

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はいできました。これは癖がない味なので”坊や”でもぐいぐいイケると思います。材料のおさらいです。

 

ギルビーウォッカ 95ml

生レモン 1/2個

ソーダ水 250ml

砂糖 小さじ1

 

以上全てをグラスにぶちこんで軽くステアして完成です。

 

 

ジャック・ケルアックがある種の人々にとってカッコよく映るように、安く酔える底辺の酒・ストロングゼロこそが最もスノッブな飲み物である、という価値観もけっこう散見するようになったので、そんな方々のために本記事を書きました。何かの参考になれば幸いです。

 

ちなみに本記事はストロングゼロAdvent Calendar2017の12月23日の記事として作成されました。

adventar.org

 

記事を書くと宣言してから1ヶ月遅れ、この今更感…。ボウズはおじさんのようなダメ人間にはけっしてなっちゃいけないよ…

*1:意見には個人差があります

東京都台東区浅草橋

新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

 

またぐるなびで記事を書きました。浅草橋で一晩で八軒ハシゴ酒するという内容です。俺の職場は浅草橋にあり、かれこれ10年以上この街で働いてます。今回は勝手知ったる浅草橋で飲み歩き、ということで取材感ゼロの楽しい夜でした。ていうか、この記事で本当に言いたかったことは一軒一杯ルールで飲み歩くと楽しいよ、ということなので別に浅草橋じゃなくてもいいんです。いいんですけど、それはそれとして浅草橋は魅力ある下町の飲み屋街なので興味持った方はぜひお越しください。

 

r.gnavi.co.jp

 

浅草橋もこの10年でずいぶん変わったなと感じます。

 

それは、隣の街・秋葉原がかつての電気街から今はオタク文化の街になったように、この浅草橋も街の意味合いがちょっとずつ変わってきている、ということです。

 

かつての浅草橋は典型的な問屋街でした。まずはなんといっても人形屋。浅草橋東口の江戸通り沿いには人形の久月・吉徳・秀月をはじめたくさんの人形屋・問屋が軒を連ねます。雛人形五月人形を東京で買うとなったらほとんどの方が浅草橋にいらっしゃるのではないでしょうか。

 

そして服飾関係の問屋。ビーズ問屋や革問屋、また帽子屋も多いです。他にも花火の問屋、日用雑貨の問屋、日本で唯一の食用油専門店なんてのもあります。

 

そういった問屋街としての浅草橋が従前のイメージだと思うのですが、実はここ数年で浅草橋に爆発的に増えてる業種があるのです。なんだと思いますか?

 

ビジネスホテルです。

 

ここ5年くらいで10軒ぐらいの大きなビジネスホテルが建ってます。いまも1軒が建設中です。建物の取り壊しで大きな建物が建つな、と思ったら9割以上の確率でビジネスホテルです。いったいこれはどういうことなのでしょう。

 

考えられるのはなんといっても浅草橋の利便性です。羽田空港と成田空港へは電車で一本。東京駅へは電車で3駅。また観光地へもものすごく近く、秋葉原へは歩いて行ける近さだし、浅草へは電車で2駅です。ビジネスだろうと観光だろうと抜群の立地です。

 

その利便性を考えたら、地価は割安です。東にちょっと歩くと千代田区秋葉原、南の神田川を渡るとすぐに中央区になりますが、千代田区中央区にくらべると台東区の浅草橋の物件は割安です。

 

そこにビジネスホテル業界が目をつけ、競るようにホテルの建設ラッシュになっているのだと思われます。ここ数年で東京出張・旅行で浅草橋に泊まられる方もずいぶん増えたと思います。

 

その割には秋葉原と比して浅草橋が盛り上がってるなとはお世辞にも言えません。

 

ひとつは、問屋街としての浅草橋の相対的な地盤沈下です。

 

まず人形屋。もはや雛人形五月人形が売れる時代ではないのでしょう、例えば吉徳はぬいぐるみやランドセルなどにかなり力を入れてる印象で、他の人形屋も業態変換はさけられません。服飾関係の問屋も中国や東南アジアに年々仕事を奪われジリ貧の様相です。

 

そしてもう一つは、致命的なまでの土日の昼間人口の少なさです。問屋街なので、休日はマジで人がいません。人がいないから、飲食店も営業しない、飲食店がやってないから人が来ない…という悪循環です。この辺も浅草橋の地価の安さに繋がってるのかもしれません。

 

日本に滞在する外国人観光客が年々増え、浅草も秋葉原ももの凄い人出だというのに、浅草橋がいまいち盛り上がりに欠けるのは地元民としてもちょっと寂しいです。私もずいぶん浅草橋生活が長いので、少しでも浅草橋が盛り上がればいいな、と思ってます。

 

ここ数年で飲み屋街としての赤羽がかなり注目されてると思うんですが、どう考えたって清野とおるさんの東京都北区赤羽の影響だと思うんですよ。やっぱり情報発信って大事だな…って思いますね。ですので、俺も微力ながら浅草橋の情報発信に貢献できればな、と考えてます。あの記事が浅草橋に泊まられる方の参考となれば幸いです。

 

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娘が生まれてから飲みに行く機会自体がめっきり無くなってしまいましたが、beviの店長さん、数年ぶりに行っても俺のこと覚えてくれました。別に常連でもなんでもなくたまにいくぐらいの客だったのにね。本当に良い店です。あまりに個人的な体験すぎて記事には書けませんでしたが、感動したのでここに記しておきます。

全盛期のデブは座っただけでソファが折れる

2年ぐらい前の話だろうか。「測るだけダイエット」というのが流行った時に、よし俺もダイエットしよう、と一念発起し、当時80㎏あった体重が半年ぐらいで70㎏を切るぐらいまで減量することに成功した。

 

今にして思えば、この成功体験が良くなかったのだと思う。

 

「俺は本気を出せばいつでも痩せられる…」

 

このような慢心のせいで最近の体重は82㎏になってた。元より増えてる。

 

デブになると日常生活を送るうえでいろいろと弊害がある。ダイエットをする前、会社でしゃがんだときに、ビリビリビリと盛大な音とともにスーツのズボンが全部裂けた、ということであった。当然替えのズボンなど持っていないのでホッチキスで避けた箇所を留めて一日中その格好で仕事をこなした。衣服がなにかの拍子で裂ける、というのはよくある”デブあるある”の一つである。

 

俺はこの手のデブあるあるの修羅場はけっこうくぐっているので、最近は衣服の張り具合で「あ、これは無理をしたら裂けるな」というのがなんとなくわかるようになった。だからデブあるある的な事故と無縁の平穏な生活が続いていたのである。ついこの間までは。

 

事故は唐突におこった。家でソファでくつろごうと腰を掛けた瞬間、ガコーン!というけっこうな音がソファから聞こえた。え?なにいまの??ソファをひっくり返しタッカー留めされた底面の布を剥がしてみると、ソファーの骨組みが真ん中でぽきりと折れていた。えー?こんなことってあるの?たしかに普段よりちょっと勢いつけてソファに腰かけたけども、ソファが折れる、という事象は聞いたことがない。まるで全盛期のイチロー伝説のようではないか。空手家が拳で瓦を割るかのように、全盛期のデブは座っただけでソファが折れる。

 

それはこの家に引っ越してきたときに買った、IKEAの安いソファだった。10年近く使ったと思う。ものは考えようだ。これを機に、ちょっと良いソファを買おうじゃないか。

 

で、蔵前の家具屋NOCE(ノーチェ)に行ったら素敵なソファに出会いいっぺんで気に入ってしまった。それはアームとフレームにオークの天然木を使用した青色のソファだ。座り心地が格段に良い。ソファに張りがあるというか、デブが座っても余裕で跳ね返してくるような弾力がある。佇まいにも高級感がある。これだ。これしかない。

 

しかし注意書きに「搬入の際に、搬入経路の幅が85cm以上必要になりますのでご確認をお願い申し上げます」とある。うちの間口を計ったら80㎝であった。まるでズボンにデブの体が入らないように、うちの家にソファが入らないので悲しくなった。

 

「…このソファ奥行78でしょ?玄関で梱包を解けばギリ搬入できるのでは」

 

まるでデブが掃けないズボンをちょっと腹をひっこめて無理くり履くように、俺もまた狭い我が家にソファを無理くり入れようとしている。往生際の悪さもまたここ数年で培った”デブあるある”の一つなのかもしれない。

 

いや、そんなデブあるあるを言ってる場合じゃない。思えば今年は少し飲み食いが過ぎた。来年こそは節制して70㎏を切るぞ。これは決意であり宣言だ。